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コラム 牧師の書斎から

2012年5月27日 澤村信蔵師

昔、インダス川のほど近くに、アリ・ハフェドという名の老いたペルシャ人が住んでいました。彼は広大な農場や果樹園、穀物畑、庭園を持っていました。金に困ることなく、裕福で満ち足りた生活を送っていました。裕福だと思ったから満ち足りていたし、満ち足りていたから裕福だと思えたのです。ある日、アリ・ハフェドのもとに、老僧がやってきて、ダイヤモンドについて話しました。「ダイヤモンドの鉱脈を持てば、国を買うことも、巨大な力によって子どもを王位につけることもできるのです。」彼は、とたんに貧しい男になっていました。何かを失ったわけではないけれども、満ち足りていないゆえに貧しく思い、貧しく思えるゆえに満ち足りなかったのです。

彼は「ダイヤモンドの鉱脈がほしい」と思い、次の朝、農場を売ってお金を集め、家族を隣人に託して、ダイヤモンドを探しに出かけました。世界中を放浪し、あり金すべてを使い果たし、ぼろぼろの身なりで、惨めさに貧しさをまとってスペインのバルセロナの岬に立ちとうとう自殺をしてしまったのです。

ある日、アリ・ハフェドの農場を買った男はラクダに水を飲ませるために庭園に連れて行きました。ラクダが庭の小川の浅瀬に鼻を入れたとき、男はその小川の白い砂のなかの不思議なきらめきに気づきました。彼が拾い上げたその黒い石の中心は虹色に反射していました。男はその小石を家に持ち帰り、暖炉の炉棚に置き、そのまま忘れていました。数日後、その男のもとをあの老僧が訪ねてきました。客間のドアを開けた瞬間、炉棚の光に気づき、駆け寄ってきました。なんとそれはダイヤモンドでした。そして、彼らは庭園に走り、白い砂を指でかきわけてみました。すると、最初のものよりも美しく価値ある宝石が出てきました。こうして、ゴルコンダのダイヤモンド鉱脈は、こうして発見されました。地球上で最も大きなダイヤモンドはこの鉱脈から産出されているのです。これが歴史の真実なのです。

アリ・ハフェドが自分の家にとどまって、自分の地下倉庫や小麦畑、庭園を掘っていたら、惨めに飢え、異国で命を絶つこともなく、『ダイヤモンドの土地』を手にしていたでしょう。自分の与えられている恵みの豊かさに気づいて感謝しつつ、おかれた所で輝いて生きることが一番なのです。