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コラム 牧師の書斎から

2012年9月9日 澤村信蔵師

先日、山元兄と一緒に福島県南相馬市にある原町聖愛保育園に行ってきました。そこは、日本基督教団原町教会が経営されている保育園です。保育園は、原発から24㎞という距離にあります。昨年3月11日以来、しばらくは保育園を開くことが出来ませんでしたが、まだ残っている子どもたちのために、少し離れたところに場所を借りながらすぐに保育園を再開し、今も公営の保育園3つほど再開できない中、地域の子どもたちの良き受け皿になっています。今回うかがって、除染作業がいかに大変な作業であるかということを知りました。徹底的に除染をし、今は、0.14(マイクロシーベルト/h)ぐらいになっています。それでも朝、昼、夕と一日3回拭き掃除をし、靴につく泥をどのようにして園舎に入れないかと心を配っておられました。窓のそばには、放射線を吸収する水の入ったペットボトルを並べて、少しでも放射線を防ごうと工夫をされていました。プールも、一旦土にふれた水が子どもたちに触れないように細心の注意を払っておられるとのことでした。何をするにしても、神経をすり減らしながらされている保育士の方々の配慮や、また親御さんの思いを考えると心が痛くなりました。最後に園長先生に、私たちに望むことは何ですかと伺ったら、「風化させないでください。」と語っておられました。園長先生が、保育士の集まりで講演をされました。除染を如何に行ってきたか。そして、最後に、南相馬のある子どもの話をされました。学校から帰ってくるとその子は毎日泣くそうです。「自分はもう大人になれない。」と。テレビである人がそう言っていたと。親がどんなに否定しても、もう夢も希望もないと毎日泣くのです。こういう子どもたちがいるので、テレビなどで無責任な発言はしないでくださいと語ったそうです。その次の日、隣に座った北海道から来られた人は、まだ放射能の影響ってあるんですねと平然と言っていたというのです。今も神経をすり減らし、また心痛め、おびえながら過ごしている子どもがいるのに、他人事なのです。それが現実です。「だから、風化させないでください」と言われました。私たちは、痛みの中にある人のことを忘れず、なお祈り励ますものとさせていただきましょう。