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コラム 牧師の書斎から

2014年9月28日 澤村信蔵師

 アメリカでも日本でも有名なAAという団体があります。アルコール依存症の人を助けるために1935年創立された団体で正式名は、Alcoholics Anonimousと言います。Anonimousというのは匿名という意味です。依存症で悩む人たちの名前を伏せて、匿名で治療します。
 この団体の創設者のビル自身も依存症でした。彼は、どうやってもアルコール依存症から抜け出せませんでした。そして、依存から抜け出せない自分に絶望します。苦しんで、悩み続けて疲れ果ててしまったある日、自分の持っていた時計が壊れてしまいます。それはスイス製の高級時計で自動巻きで、日付が付いていて、防水の素晴らしい一品でした。当時としては、あらゆる機能を持った複雑な時計でした。修理してもらうために、時計屋さんへ持って行きました。そして、数日後、彼は、その時計を受け取りに出向いていきます。でも、時計屋の主人が時計を手渡してこう言うのです。「ビル。君のこの時計は、大変複雑で精巧な品物だ。残念ながら、この時計はうちで直すことはできない。アメリカのどの時計屋に持って行っても、これは直せないよ。これを直す唯一の方法があるとすれば、製造元へ送り返すことだ。造った人なら、どうやって直すか分かるだろう」と。そして、彼はその直せなかった時計をポケットに入れて店を出ます。歩きながら、店の主人の言葉が、自分の人生そのものだということに彼は気が付くのです。「残念ながらこの時計はうちでは直せない。直すとしたら、製造元に送り返す以外にはない」ということは、まさに自分の人生だと彼は感じ取って、教会の門を叩くのです。
 私たちの人生も同じです。私たちの人生が自分ではどうしようもないと感じたら、製造元に行って直してもらう以外に方法はないのです。私たちが行くべきところ、それは神様の元です。私たちは、この神様の元に行くことによって、本当の癒しが与えられるのです。「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます」(マタイ11:28)今日も私たちの造り主である神の元へ行きましょう。