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コラム 牧師の書斎から

2016年9月4日 澤村信蔵

 聖書のユダヤ教的解釈について学んだことがあります。その中で面白かったのは、「メムラ」という語です。旧約聖書を調べ、メシヤを待ち望んでいたユダヤ人のラビたちは、メシヤは神の「ことば」として旧約聖書にあらわされているということで、アラム語で「ことば」という意味を持つ「メムラ」という概念を作り出します。これも神の啓示なのだと思いますが、その概念は6つです。①メムラは、時には神であり、時には神とは別のお方。②メムラは、天地創造に参加されたお方である。③メムラは、神の代理人、仲介者である。④メムラは、神の栄光のあらわれ(シャカイナグローリー)である。⑤メムラは、契約の仲介者である。⑥メムラは、啓示の仲介者である。これらの事が、信じられていました。特に①神であり、神とは別というのは、簡単には理解できない概念だと思いますが、でも、ラビたちは全く説明もせず、そのままを受け入れていました。このあたりがユダヤ人なのでしょうね。分からないことは分からなくても、そのまま受け取っていくのです。
 そして、驚くべきことに、彼らが考えていたとおりのお方がこの地上に誕生します。そのことを表現したのが、ヨハネの福音書1章です。「初めにことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。この方は、初めに神とともにおられた。すべてのものは、この方によって造られた。造られたもので、この方によらずに出来た者は一つもない。・・ことばは人となって、私たちの間に住まわれた」まさに、ことばは、神であるとともに、神と共にある。完全なる神であり、また完全なる人として、この地上に来てくださったお方だと感動と驚きを記したのが、ヨハネの1章です。ヨハネは、まさに、ラビたちが考えていた「メムラ」という概念のすべてを満たすお方、それがイエス・キリストだったのだと記したのです。そして、このお方が今も私たちの内に住んでくださっているのです。