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コラム 牧師の書斎から

2017年11月19日 澤村信蔵

「バヘットの晩餐会」という古い映画があります。厳格なルター派の牧師と、2人の美しい娘たちがいました。二人には、結婚などのチャンスを振り切りこの世の幸せを犠牲にして主に仕える道を選びます。やがて牧師も亡くなります。そんな二人のところにフランスからすべてを失ったバベットが流れ着きます。彼女は家政婦として働くようになります。二人は、父親の教えに従い、厳格に、またつつましく生きるように努力します。でも、牧師が亡くなり、時間の経過とともに村人たちの信仰は衰え、不平不満を言うようになります。そこで何とかしようと、2人の姉妹は、父親の生誕100年を記念したささやかな食事会を企画します。ちょうどその時、バヘットに1万フランの宝くじが当たったという知らせが母国から届きます。バヘットはフランスに戻るのだとさみしい思いでいると、彼女は、最後に晩餐会の食事を作りたいと申し出るのです。つつましく生きること知らない二人なので断ろうとするのですが、あまりにも熱心に言うために、許可してしまいます。そして、当日次から次へと豪華な料理が運ばれてきます。「これはもしかしたらサタンの誘惑かも知れない。絶対に豪華な食事を喜んではいけない。おいしいと言ってはならない」と村人たち皆を諭し、一致団結して、苦虫をかみつぶしたように食べようとするのです。誰ひとりおいしいという人はいませんでした。でも、最高の食事を食べ、ワインを飲み、歓談していると、不思議と心がほぐれてきます。懐かしい思い出が口からこぼれます。いがみあっていたもの同士が悪かったと言い合うようになっていきます。そして、最後には、神をほめたたえるようになるのです。後から分かることですが、バヘットは、当たった宝くじ全部を使い切っていたのです。まるであのナルドの香油を注いだ女のようです。神の恵みとは、まさにこのようなものです。ご自分のいのちとともにすべてをささげ尽くしてくださり、私たちにあふれる喜びを与えてくださる主をほめたたえましょう。