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コラム 牧師の書斎から

2019年8月18日 澤村信蔵

 8月15日終戦記念日を迎えました。戦争は悲惨ですが、そこにも希望はあることを覚えます。昔、「クワイ河の奇蹟」という映画を見ました。実際にタイで起きた出来事で、数万人のイギリス兵が日本軍の捕虜となり、クワイ河にかかる鉄橋を作らされます。弱った捕虜たちが毎日のように死んで行きます。極限状態の収容所生活の中で、捕虜たちは次々とモラルを失い、自分が生きていくためには他人はどうなってもいいという考え方に堕ちていきます。でも、そんな中、ほんの数人の捕虜たちの自己犠牲的な行為が収容所全体の雰囲気を変えてしまい、彼らの中にやさしさやいたわりの心が生み出されるのです。ある日の労働が終わり、工事用具の確認が行われました。確認がすみ、宿舎へ帰る寸前に日本軍の捕虜監視兵が、シャベルが一本足りないと宣言しました。「盗んだ者は一歩前に出てきて罰を受けろ」と叫びます。しかし誰一人動きません。「全員死ぬ」と逆上した監視兵は、捕虜たちを一通り眺めた上で、左端の者から射殺しようとします。その時、捕虜の一人が「私がやりました」と名乗り出ます。当然、監視兵は怒りを爆発させ、その捕虜を銃で殴り殺します。ところが、その後もう一度用具を数えると、数え間違いで全部揃っていることがわかりました。その時、皆はあの捕虜が自分たちの命を救うために犠牲になったことを知るのです。この出来事は捕虜たちの生活に決定的な影響を与えました。それから他者をいたわることを学び始めます。特に病人の世話をするようになり、又食物も互いに分け合うようになります。殺伐とした世界に人間的なもの、気高いものが生まれるのです。誰かの死が他の人に本当の命を与えるのです。