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コラム 牧師の書斎から

2021年3月7日 澤村信蔵

「わたしはあなたがたに新しい戒めを与えます。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネ13:34)

 3月11日、東日本大震災から10年を迎えます。東京でも体感した大きく長い揺れにも驚きましたが、そのあとの津波の恐ろしさは、映像を通してですが、心に深く刻まれています。何度かボランティアにも行きましたが、これまでの日常が完全に壊れてしまった現場を見ました。すべてを失い何から手をつけていけばいいのか。回復への道が見えない姿にこちらも心痛みました。
 あの年、繰り返し語られた言葉は「絆」でした。破壊され、傷き、絆の大切さ、必要性を再確認したのです。また、福島第一原発の事故も考えさせられました。首都圏は、遠く離れた福島の原発から受ける電力によって支えられてきたという事実です。原発を押し付けて来て、申し訳なかったという思いになった方も多かったのではないでしょうか。そして、原発だけでなく、あの地域が破壊されたことにより、ガソリンなど様々なものが行き巡らないことも体験しました。多くの絆が既にあったことに気づきました。でも、私たちはまた、かつてのことを忘れています。彼らの痛みを忘れてしまっています。もう一度、この時に思い出し、今も回復できずにいる方々、生まれ故郷を追いやられた方々のために祈りましょう。
 そして、私たちは今も「絆」を必要とする時代に生きています。聖書的に言えば「愛」ですね。コロナによって、ソーシャルディスタンスが求められています。長く続く自粛により、経済も心も荒んでいる今ほど心の絆の大切な時代はありません。互いに励まし合い、愛し合い進んでいきましょう。