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コラム 牧師の書斎から

2010年5月16日 澤村信蔵師

今、宮崎県で口蹄病が蔓延している。口蹄病は、牛、豚などの家畜に発生する急性伝染病で、症状は発熱、よだれ、口や蹄の水疱、歩行障害、不妊、流産などが起き、人間が食べても影響はないとされるが、対策としては隔離・処分しかない。日本では2000年に、92年ぶりの発生が2カ所で確認された。今回のことで、8万頭以上の牛・豚が殺処分となり、農家の方々は今悲痛な声をあげている。

今回、その被害の大きさもさることながら問題となっているのは、農相をはじめとする政府の対応の遅れである。2000年の時には、迅速な対応ができ300頭くらいで被害をとどめることができた。病気なので必ずしも同じ対応で同じ結果がもたらされるとは限らないが、今回はうまくいかなかったようである。でもそれ以上に、農家の怒りをかっているのは、農相が病気の発生を知りつつ、外遊に出かけたことと、帰ってきて宮崎県入りするも、現場には入らなかったことが農家の痛みをさらに大きくした。危機感の欠如と、苦しむ人のそばに寄り添い痛みを知るということに欠けていたのである。

でもこの農相とは正反対の行動をした人がいた。民数記16章に出てくるアロンの姿である。コラたちがモーセと神に反逆し、それに同調した民に神の裁きが及んだ時、その裁きが行われている真っただ中に走り出して行って、自分の身を置いて、そこでとりなしをしたことが記されている。

私たちの周りにも、多くの滅びに行こうとしている人がいる。その人たちのことをどれだけ危機感を持っているだろうか?また、その人のそばにいることをどれだけ望んでいるだろうか?「見よ、神罰はすでに民のうちに始まっていた。そこで彼は香をたいて、民の贖いをした。彼が死んだ者たちと生きている者たちとの間に立ったとき、神罰はやんだ。」(民数記16章47~48節)私たちも苦しんでいる人、今まさに滅びに行こうとしている人のそばに立つものとなろう。