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コラム 牧師の書斎から

2010年8月1日 小平牧生師

ボブ・ピアスという名前を聞いたことがあるでしょうか。偉大な伝道者であり、50年ほど前に大阪と東京でそれぞれ一ヶ月間にわたって毎晩行われた伝道

集会は日本のキリスト教界の歴史上、最大のものであると言われています。特に東京体育館で行われたクルセードでは、後に日本の教会を支えた多くの牧師や信徒の方々が救われました。また彼は「ワールドビジョン」の創設者としても有名です。「ワールドビジョン」は、世界の100ヶ国以上の国で仕えている最大級の救援・開発組織です。

ボブ・ピアスはビジョンの人であり、信仰の人であり、祈りの人でした。多くの人々を救い、苦しみから助けました。ビリー・グラハムとともに20世紀最大の伝道者の一人でしょう。しかし、どんなにすばらしい神の人も、(アブラハム、モーセ、ダビデその他の聖徒たちがそうであるように)弱さを持っています。というよりも、その強さそのものに落とし穴があります。

彼の娘によって記された「ビジョンの男性・祈りの女性」には、彼の偉大な働きと同時に、彼の人生の持つ闇の部分が正直に記されています。たとえば、ある時彼の一人の子どもが心の痛みを患い、家族は彼に早く帰って来て欲しいと願いますが、彼は仕事を優先させます。飢えた人々の必要を満たすために、帰国することなくそのプロジェクトに没頭するのです。やがてその子どもは自らの命を絶ちます。それでも、彼は働き続けます。そのようにして妻や子どもたちとの家庭を失ってしまうのです。それでもなお、彼は「神のために燃え尽きさせて下さい」と、海外を飛び回り続けます。そして、その通り、やがて彼は燃え尽きてしまいます。

もちろん、私は彼の人生と偉大な業績の価値を低くしようとは思いません。私にそういうことがないのは、私には彼のような能力も情熱もないだけです。しかし、人生は氷山のようなものです。仕事や奉仕や表面に表れますが、人生のほとんどは水面下の深いところに隠されており、暗闇のままで光があてられることはありません。しかしその部分が実は大事であることを忘れてはならないと思います。