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コラム 牧師の書斎から

2016年8月28日 澤村信蔵

 こないだある方と「あなたの父と母を敬え」について話しました。この言葉は、道徳として見るなら、違和感はありません。親を大切にするというのは、当然のことと言えるでしょう。でも、それが戒めだと言われると本当に不思議な感じがします。第1戒から第4戒は、神様のことについて書かれています。「わたしのほかに、他の神々があってはならない。」など神様についての戒めは、思いつかなくても、聞けばなるほどと思います。神様を愛する。神様を大切にするということは、こういうことなのかと分かるような気がします。そして、第6戒からは、殺すな。姦淫するな。盗むな。偽りの証言をするな。隣人のものを欲しがるなと続きます。最後の10戒は別として、殺すなとかは、多くの人が悪いことということですぐに思いつく言葉です。愛のある人間関係を築いていこうとするときに、あってはならないものだというのは容易に想像がつきます。そして、第10戒は、単に行為のみならず、心の面に及んでいるということで、なるほどと納得します。でも、「あなたの父と母を敬え」だけは、少し違和感を覚えるのです。10個戒めを考えろと言われた時、私なら思いつきもしません。しかも、親は自分では選べません。いい親もいますが、悪い親も結構な割合でいるからです。でも、神様は、大切な戒めの一つとして、もっと言うなら私たちが普通最大の罪と考える殺人よりも、大切なものして、「あなたの父と母を敬え」とおっしゃるのです。それは、親子の関係が、私たちがこの地上に生を受けて最初に体験する人間関係であり、社会関係であるからです。自分に与えられた境遇、そこにも神の御手があるということを認めよと言われているのではないでしょうか。そのことを話すうちに、その方が、自分の親がいかに、すばらしいかということに目を留められました。そしてそれ以上に、そのようにここまで導いてくださった神様をほめたたえるように変えられていきました。「あなたの父と母を敬え」神が与えてくださったすべてを感謝していきましょう。