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コラム 牧師の書斎から

2015年10月11日 澤村信蔵

ボンヘッファーは、ナチス政府に屈しない教会の抵抗運動を起こし、最後はヒトラー暗殺を企てる地下組織に加わったことが発覚し処刑された牧師です。1944年の終わりに、獄中でひとつの詩を書き残しています。まさにいつ死刑に処せられるかわからない不安の中でも覆ってくださる主のよき力を唄っています。

「主のよき力に、確かに、静かに、取り囲まれ、不思議にも守られ、慰められて、私はここでの日々を君たちと共に生き、君たちと共に新年を迎えようとしています。

過ぎ去ろうとしている時は、私の心をなおも悩まし、悪夢のような日々の重荷は、私たちをなおも圧し続けています。

ああ主よ、どうかこのおびえおののく魂に、あなたが備えている救いを与えてください。

あなたが、もし、私たちに、苦い杯を、苦渋にあふれる杯を、なみなみとついで、差し出すなら、私たちはそれを恐れず、感謝して、いつくしみと愛に満ちたあなたの手から受けましょう。

しかし、もし、あなたが、私たちにもう一度喜びを、この世と、まぶしいばかりに輝く太陽に対する喜びを与えてくださるなら、私たちは過ぎ去った日々のことをすべて思い起こしましょう。

私たちのこの世の生のすべては、あなたのものです。

あなたがこの闇の中にもたらしたろうそくを、どうか今こそ暖かく、静かに燃やしてください。

そしてできるなら、引き裂かれた私たちをもう一度結び合わせてください。

あなたの光が夜の闇の中でこそ輝くことを、私たちは知っています。

深い静けさが私たちを包んでいる今、この時に、私たちに聞かせてください。

私たちのまわりに広がる、目に見えない世界のあふれるばかりの音の響きを、あなたのすべての子供たちが高らかにうたう讃美の歌声を。

主のよき力に、不思議にも守られて、私たちは来たるべきものを安らかに待ち受けます。

神は、朝に、夕に、私たちと共にいるでしょう。

そして、私たちが迎える新しい日々にも、神は必ず、私たちと共にいるでしょう」。

私たちは、弱い時も、不安な時にも、たとえ死が迫っている時であっても、この主のよき力に覆われているのです。この主を今日もあがめていきましょう。